SERIES III — WORK, PRESSURE AND THE JAPANESE WORKPLACE
第11巻
強くあり続けることに疲れたあなたへ
― 日本の職場、過労、心の疲れ、そして「もう一度、自分を大切にする」という生き方 ―
著者
Prof. Dr. Larry Adams
はじめに
「もう少し頑張れば大丈夫」と言い続けているあなたへ
日本社会では、「責任感があること」「努力すること」「周囲に迷惑をかけないこと」「最後までやり抜くこと」が大切な価値として語られることが多い。これらは本来、人間の強さ、誠実さ、共同体への責任を表す美しい価値である。
しかし、その美しい価値が、いつの間にか自分自身を追い詰める力になることがある。
仕事が忙しくても「大丈夫です」と言う。
眠れていなくても「大丈夫です」と言う。
心が疲れていても「まだ頑張れます」と言う。
家族に心配をかけたくなくて、何も言わない。
職場で弱いと思われたくなくて、助けを求めない。
そして、自分自身にさえ、
「もっと頑張らなければならない」
「自分が弱いだけだ」
「みんな大変なのだから、自分だけ休むわけにはいかない」
と言い続ける。
そのような生き方を続けると、人は「強くなる」のではなく、「疲れていることを認められなくなる」ことがある。
本書のタイトルは、
「強くあり続けることに疲れたあなたへ」
である。
これは、努力することを否定する本ではない。
仕事を否定する本でもない。
責任を放棄することを勧める本でもない。
むしろ本書が伝えたいのは、
本当の強さとは、壊れるまで耐えることではない
ということである。
日本政府は「過労死等」の防止を重要な政策課題として扱い、法律に基づいて毎年、国会に白書を提出している。2025年版の白書は第10回目に当たり、近年の労災請求・認定の傾向、重点業種、長時間労働、メンタルヘルス、ハラスメント防止、働き方改革などを取り上げている(厚生労働省, 2025a)。
したがって、職場の疲労や心理的負担は、単なる「個人の弱さ」の問題として扱うことはできない。
これは、個人、家庭、組織、経営者、管理者、同僚、社会制度、そして文化が関係する問題である。
本書では、日本の職場における圧力と疲労について考えながら、一人の人間としてどのように自分を守り、働き、休み、回復し、そして再び希望を持って生きることができるのかを考察する。
目次
第1章 強くあり続けることに疲れた
第2章 「頑張る文化」の光と影
第3章 仕事のプレッシャーはどこから来るのか
第4章 過労死――仕事が生命を脅かすとき
第5章 心の疲労――見えない傷
第6章 「NO」と言えない職場
第7章 完璧主義と自己否定
第8章 職場の人間関係、上下関係、ハラスメント
第9章 仕事と家庭の間で
第10章 休むことは敗北ではない
第11章 強さを再定義する
第12章 組織は人を守れるか
第13章 管理者・リーダーの責任
第14章 もう一度、自分の人生を取り戻す
第15章 30日間の回復と再出発プログラム
終章 あなたは、壊れるまで頑張らなくていい
参考文献
第1章
強くあり続けることに疲れた
1.1 「強い人」のイメージ
私たちは幼い頃から、強い人とはどのような人なのかを学んでいる。
泣かない人。
弱音を吐かない人。
最後まで頑張る人。
責任を果たす人。
他人に迷惑をかけない人。
失敗しても立ち上がる人。
もちろん、これらは素晴らしい特性である。
しかし、「強い人は疲れない」という考え方は危険である。
人間には限界がある。
身体には限界がある。
集中力にも限界がある。
感情にも限界がある。
睡眠不足にも限界がある。
そして、心にも限界がある。
だから、疲れることは弱さではない。
疲れることは、人間であることの証拠である。
1.2 疲労は身体からのメッセージ
疲労は敵ではない。
疲労は、身体が送っている情報である。
「休んでください」
「速度を落としてください」
「今の働き方を見直してください」
「何かを変える必要があります」
というメッセージかもしれない。
問題は、疲労そのものではない。
問題は、疲労を無視し続けることである。
厚生労働省も、過重労働による健康障害を防ぐためには、時間外・休日労働の削減、年次有給休暇の取得促進、健康管理体制の整備、健康診断、必要に応じた医師による面接指導などが重要であるとしている(厚生労働省, 2025b)。
したがって、「疲れたら休む」という考え方は怠惰ではない。
健康管理の一部である。
1.3 強さと我慢は同じではない
我慢できることと、強いことは同じではない。
強さとは、自分の限界を知ることでもある。
強さとは、助けを求めることでもある。
強さとは、「今日は無理です」と言えることでもある。
強さとは、必要なときに専門家へ相談することでもある。
強さとは、自分の人生を仕事だけにしないことである。
第2章
「頑張る文化」の光と影
2.1 努力という価値
日本の社会には、勤勉、責任、規律、継続、忍耐などを重視する文化的要素がある。
こうした価値は、日本の教育、企業文化、社会生活のさまざまな場面で重要な役割を果たしてきた。
仕事を丁寧にする。
約束を守る。
時間を守る。
顧客を大切にする。
チームを守る。
品質を追求する。
これらは組織の信頼を形成する重要な要素である。
しかし、どのような価値にも「過剰」が存在する。
努力が過剰になれば、自己犠牲になる。
責任感が過剰になれば、すべてを自分で背負うことになる。
忠誠心が過剰になれば、離れることができなくなる。
完璧主義が過剰になれば、失敗することを恐れてしまう。
2.2 「迷惑をかけない」という圧力
「他人に迷惑をかけない」という価値観は社会生活において重要である。
しかし、それが、
「助けを求めてはいけない」
という意味に変わってしまうと問題になる。
人間は一人で生きる存在ではない。
助けることも人間関係であり、助けてもらうことも人間関係である。
したがって、
「迷惑をかけない」だけではなく、「互いに支え合う」社会
を目指す必要がある。
2.3 組織に必要なのは「頑張る人」だけではない
企業が求めるべきなのは、限界まで働く人ではない。
長期的に健康で、創造的に働ける人である。
長時間働いている人が必ずしも高い成果を上げているとは限らない。
疲労は判断力、集中力、感情調整、コミュニケーション、創造性などに影響し得る。
したがって、経営者は、
「何時間働いたか」
だけではなく、
「どのような成果が生まれたか」
「従業員はどのような状態で働いているか」
「その働き方は持続可能か」
を考える必要がある。
第3章
仕事のプレッシャーはどこから来るのか
3.1 プレッシャーの構造
仕事のプレッシャーにはさまざまな原因がある。
第一に、業務量である。
仕事が多すぎると、人は時間を圧縮しようとする。
昼食を短くする。
休憩を取らない。
仕事を家に持ち帰る。
休日にもメールを確認する。
夜遅くまでオンラインになる。
こうした行動が積み重なると、仕事と私生活の境界がなくなっていく。
3.2 時間的プレッシャー
締切が多い。
会議が多い。
メールが多い。
顧客対応が多い。
人員が不足している。
こうした状況では、「時間がない」という感覚が強くなる。
そして、人は時間を増やせないため、自分の睡眠、休息、家族との時間を削るようになる。
3.3 評価へのプレッシャー
仕事の成果だけではなく、
「上司からどう見られているか」
「同僚より遅れていないか」
「昇進できるか」
「評価が下がらないか」
という心理的負担も存在する。
評価制度が不透明であれば、さらに不安は大きくなる。
3.4 雇用への不安
仕事を失う恐怖は、人を非常に強く働かせる。
「この仕事を失ったらどうしよう」
「会社に必要とされなくなったらどうしよう」
という不安は、過剰労働を受け入れる心理的背景になることがある。
3.5 デジタル化による24時間化
スマートフォンとクラウドシステムによって、仕事はどこにでもついてくる。
以前は会社を出れば仕事から離れることができた。
現在は、ベッドの上でもメールを読むことができる。
休日の旅行中にもメッセージが届く。
深夜にも通知が届く。
テクノロジーは仕事を効率化した。
しかし同時に、
「仕事から離れる自由」
を弱める可能性もある。
第4章
過労死――仕事が生命を脅かすとき
4.1 過労死という言葉
「過労死」という言葉は日本社会だけでなく、国際的にも知られるようになった。
日本の法律では、2014年に「過労死等防止対策推進法」が制定された。
2025年版の政府白書によれば、「過労死等」は、過重な業務負荷による脳血管疾患・心疾患による死亡、仕事上の強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、さらに死亡には至らない関連する健康障害などを含む(厚生労働省, 2025a)。
これは重要な点である。
過労死とは、単純に「働きすぎて疲れた」という意味ではない。
生命や健康に深刻な影響を及ぼす仕事上の過重負荷を含む社会的・公衆衛生上の問題である。
4.2 毎年の政府報告
日本政府は法律に基づき、毎年、過労死等の状況と防止施策について国会に報告している。
2025年版は第10回目の白書であり、近年の労災請求・支給決定の傾向、重点業種における状況、調査研究、メンタルヘルス、ハラスメント、長時間労働削減などを扱っている(厚生労働省, 2025a)。
重点的に調査されている分野には、自動車運転、教育、IT、外食、医療、建設、メディア、芸術・芸能などが含まれる。
これらの分野に共通する特徴は、それぞれ異なる形で時間的・心理的負荷が生じやすいことである。
4.3 「忙しい」から「危険」へ
忙しいこと自体が直ちに危険というわけではない。
問題は、回復する時間がなくなることである。
仕事。
睡眠不足。
仕事。
ストレス。
仕事。
不安。
仕事。
さらに睡眠不足。
この循環が続くと、人間の回復能力を超える可能性がある。
4.4 企業の責任
過労を防ぐ責任は、労働者だけにあるのではない。
経営者と管理者には、
- 適切な人員配置
- 業務量の管理
- 労働時間の管理
- 有給休暇取得の促進
- 健康管理
- ハラスメント防止
- 相談体制
- 心理的安全性
- 必要な業務再設計
などを考える責任がある。
第5章
心の疲労――見えない傷
5.1 身体の疲れと心の疲れ
身体の疲れは比較的見えやすい。
しかし心の疲れは見えにくい。
骨折していれば周囲は気づく。
しかし、
「朝起きることが苦しい」
「仕事に行くことが怖い」
「メールを見るだけで動悸がする」
「何をしても楽しくない」
という状態は外から見えないことがある。
5.2 「何でもないふり」
心が疲れている人ほど、普通に振る舞うことがある。
笑う。
会議に出る。
仕事を完成させる。
家族と話す。
SNSに写真を投稿する。
しかし、内側では限界に近づいているかもしれない。
だからこそ、組織は「問題が表面化してから対応する」のではなく、予防的な仕組みを持つ必要がある。
5.3 メンタルヘルスは経営課題でもある
精神的健康を守ることは、単なる福利厚生ではない。
それは組織の持続可能性に関係する。
従業員が健康であれば、
- 欠勤リスクを減らす
- 離職リスクを減らす
- チームワークを改善する
- 判断の質を高める
- 創造性を維持する
ことにつながる可能性がある。
厚生労働省の過労死防止政策でも、長時間労働削減とともにメンタルヘルス対策、ハラスメント防止、相談体制の改善が重要な柱となっている(厚生労働省, 2025a)。
第6章
「NO」と言えない職場
6.1 なぜ断れないのか
「できます」
「大丈夫です」
「私がやります」
「今日中にやります」
この言葉を何度も使う人がいる。
責任感が強いからである。
しかし、その結果、仕事が一人に集中することがある。
6.2 NOは拒絶ではない
「NO」という言葉には多くの意味がある。
「できません」
ではなく、
「この期限では品質を保証できません」
という意味かもしれない。
「やりたくありません」
ではなく、
「現在の業務量では安全に実施できません」
という意味かもしれない。
したがって、職場で必要なのは単純な拒否ではなく、
境界線を明確にするコミュニケーション
である。
6.3 健康的な言い方
例えば、
「現在の優先順位を確認させてください。AとBを今日中に完了する場合、Cは明日にする必要があります。」
これは「NO」ではない。
これは専門的な仕事の管理である。
「この業務については、追加の人員が必要です。」
これは弱さではない。
これはリスク管理である。
第7章
完璧主義と自己否定
7.1 完璧でなければならない
完璧主義者は、成功しても安心できないことがある。
「もっとできたはずだ」
「間違いがあった」
「次はもっと良くしなければ」
と考える。
目標が高いこと自体は悪くない。
問題は、
自分の価値を成果と完全に同一視すること
である。
7.2 人間の価値は生産性では測れない
あなたは、
売上だけではない。
役職だけではない。
給与だけではない。
学位だけではない。
肩書だけではない。
フォロワー数だけではない。
人間としての価値を、生産性だけで測ることはできない。
7.3 「失敗した」と「私は失敗者だ」は違う
これは非常に重要な区別である。
「私は仕事で失敗した。」
これは出来事である。
「私は失敗者だ。」
これは自己認識である。
一つの出来事を、自分自身の存在価値にまで拡大しないことが大切である。
7.4 成長型の考え方
失敗を、
「自分がダメだから」
ではなく、
「何を学べるだろうか」
と考える。
この小さな言葉の変化が、自己否定を学習へ変える可能性がある。
第8章
職場の人間関係、上下関係、ハラスメント
8.1 権力には責任が伴う
職場には上下関係がある。
管理者と部下。
教授と学生。
医師と研修者。
経営者と従業員。
上司と新人。
権限があること自体は問題ではない。
問題は、権限が人を傷つけるために使われることである。
8.2 ハラスメントの問題
職場におけるハラスメントは、心理的安全性を損なう可能性がある。
怒鳴る。
侮辱する。
脅す。
人格を否定する。
過剰な仕事を意図的に押し付ける。
孤立させる。
逆に、必要な情報を与えない。
これらは単なる「厳しい指導」とは区別して考える必要がある。
8.3 「昔はこれが普通だった」
この言葉は危険である。
過去に一般的だった行動が、現在も適切とは限らない。
組織文化は変化する。
リーダーシップも変化する。
従業員の期待も変化する。
健康、安全、人権に関する理解も変化する。
8.4 心理的安全性
心理的安全性とは、単純に「いつも楽しい職場」という意味ではない。
質問できる。
失敗を報告できる。
意見を言える。
助けを求められる。
問題を指摘できる。
異なる意見を述べられる。
こうした環境が重要である。
第9章
仕事と家庭の間で
9.1 家に帰っても仕事が終わらない
身体は家に帰っている。
しかし心は職場に残っている。
夕食中にメールを見る。
子どもと話しながら仕事を考える。
休日に月曜日のことを心配する。
ベッドの中で翌日の会議を考える。
この状態では、物理的には休んでいても心理的には休めていない。
9.2 家族は「残り時間」を受け取る存在ではない
仕事が人生のすべてになってしまうと、家族との時間が「余った時間」になる。
しかし家族との時間は余りではない。
人生そのものである。
9.3 子どもが覚えているもの
子どもは親が何時まで働いていたかを覚えているかもしれない。
しかし、それ以上に、
「自分の話を聞いてくれたか」
「一緒に笑ってくれたか」
「疲れていても自分を大切にしてくれたか」
を覚えていることがある。
9.4 ワーク・ライフ・インテグレーション
仕事と人生を完全に分離することが難しい時代には、
「仕事か人生か」
ではなく、
「仕事も人生の一部として、どのように統合するか」
を考える必要がある。
ただし、統合とは「24時間仕事をする」という意味ではない。
むしろ、仕事に境界を設定しながら、人生のさまざまな役割を大切にすることである。
第10章
休むことは敗北ではない
10.1 休息の再定義
休むことを「仕事をしていない時間」と考えると、罪悪感が生まれる。
しかし休息は、
身体と心を回復させるための活動
である。
10.2 睡眠
睡眠は贅沢ではない。
身体の回復、認知機能、感情調整、記憶、注意力などに関係する重要な生理的プロセスである。
慢性的な睡眠不足を「努力の証拠」として扱う文化は見直されるべきである。
10.3 有給休暇
有給休暇は「申し訳なく思いながら取得するもの」ではない。
制度として認められた休息である。
厚生労働省も過重労働対策の一環として年次有給休暇取得の促進を挙げている(厚生労働省, 2025b)。
10.4 休んでも仕事はなくならない
多くの人が、
「自分が休んだら仕事が回らない」
と考える。
もし本当に一人が休んだだけで組織が止まるのであれば、それは個人の問題だけではない。
それは組織設計の問題である。
第11章
強さを再定義する
11.1 新しい強さ
古い強さ:
「何があっても耐える。」
新しい強さ:
「何が起きているのかを正しく認識し、必要な対応を取る。」
古い強さ:
「助けを求めない。」
新しい強さ:
「必要なときに助けを求める。」
古い強さ:
「自分だけで解決する。」
新しい強さ:
「適切な人と協力する。」
古い強さ:
「限界まで働く。」
新しい強さ:
「長期的に持続できる働き方を選ぶ。」
11.2 本当の勇気
勇気とは、恐怖がないことではない。
恐怖があっても、必要な行動を取ることである。
「私は疲れています。」
「この仕事量では難しいです。」
「助けが必要です。」
「専門家に相談します。」
これらの言葉を言えることも勇気である。
第12章
組織は人を守れるか
12.1 個人責任だけでは不十分
職場のストレスについて、
「本人がもっと強くなればよい」
と考えることは簡単である。
しかし、それだけでは問題を解決できない。
もし、
- 業務量が恒常的に過剰
- 人員が恒常的に不足
- 休暇が取りにくい
- 上司が威圧的
- 相談すると評価が下がる
- 長時間労働が暗黙に評価される
という組織であれば、個人だけに責任を負わせることは適切ではない。
12.2 健康的な組織の特徴
健康的な組織には、次のような特徴が考えられる。
- 業務量を定期的に確認する。
- 長時間労働を当然としない。
- 管理者が休暇を取得する。
- 部下が相談できる。
- ハラスメントを許容しない。
- メンタルヘルス相談を利用しやすくする。
- 評価制度を透明にする。
- 人員不足を個人の犠牲で解決しない。
- デジタル連絡に境界線を設ける。
- 健康と成果を対立させない。
12.3 「健康」と「生産性」は敵ではない
健康を守ることは、生産性を下げることではない。
むしろ、長期的には人材の維持、知識の蓄積、組織の信頼、イノベーション、サービス品質に関係する。
したがって、
人を守ることは、組織を守ることでもある。
第13章
管理者・リーダーの責任
13.1 リーダーは雰囲気を作る
部下は上司の言葉だけではなく、行動を観察する。
上司が深夜まで働いている。
上司が休暇を取らない。
上司がメールを深夜に送る。
上司が休日にも返信を求める。
このような行動は、言葉以上のメッセージになる。
「ここでは休んではいけない。」
「常にオンラインでなければならない。」
という文化を生む可能性がある。
13.2 リーダーが言うべき言葉
「今日はここまでにしましょう。」
「続きは明日で大丈夫です。」
「休暇を取ってください。」
「一人で抱えないでください。」
「何が一番負担になっていますか?」
「業務の優先順位を一緒に整理しましょう。」
こうした言葉は、組織文化を変える。
13.3 成果だけでなく持続可能性を見る
リーダーは、
「今月の成果」
だけではなく、
「この成果を来年も維持できるか」
を見る必要がある。
短期的な成果のために従業員を燃え尽きさせる組織は、長期的には大きな人的・経済的コストを負う可能性がある。
第14章
もう一度、自分の人生を取り戻す
14.1 最初の質問
自分自身に次の質問をしてみよう。
「私は最後に、本当に休んだのはいつだっただろうか。」
「最後に、仕事とは関係のないことで笑ったのはいつだっただろうか。」
「最後に、誰かとゆっくり話したのはいつだっただろうか。」
「私は仕事以外に、どのような人生を持っているだろうか。」
14.2 自分の価値観を再確認する
人生には仕事以外にも重要なものがある。
家族。
友人。
信仰。
学習。
健康。
自然。
芸術。
奉仕。
地域社会。
趣味。
静かな時間。
人生の目的。
仕事がこれらを完全に消してしまうなら、働き方を再検討する必要がある。
14.3 「何のために働くのか」
この質問は非常に重要である。
お金のため。
家族のため。
社会のため。
自己実現のため。
専門性を高めるため。
人を助けるため。
夢を実現するため。
働く理由は人によって異なる。
しかし、
「働くために生きる」のか、「より良く生きるために働く」のか
を考えることは大切である。
第15章
30日間の回復と再出発プログラム
以下は医療行為ではなく、生活と仕事を見直すための一般的な自己管理プログラムである。深刻な心理的・身体的症状がある場合には、医師、心理職、産業医、地域の相談機関など専門家に相談することが重要である。
第1週――気づく
Day 1
現在の疲労度を0~10で記録する。
Day 2
睡眠時間を記録する。
Day 3
仕事で最もストレスを感じる3項目を書く。
Day 4
不要な仕事を3つ探す。
Day 5
「本当は断りたい仕事」を一つ考える。
Day 6
30分間、仕事から完全に離れる。
Day 7
一週間を振り返る。
第2週――境界線を作る
Day 8
仕事終了時間を決める。
Day 9
不要な通知を停止する。
Day 10
仕事用メールを見る時間を決める。
Day 11
昼休みを確保する。
Day 12
「今週はできないこと」を一つ決める。
Day 13
家族または友人と時間を過ごす。
Day 14
一週間を振り返る。
第3週――回復する
Day 15
十分な睡眠を優先する。
Day 16
軽い運動または散歩を行う。
Day 17
自然の中で時間を過ごす。
Day 18
好きな音楽を聴く。
Day 19
読書をする。
Day 20
仕事と関係のない人と会話する。
Day 21
静かな時間を持つ。
第4週――再設計する
Day 22
人生の5つの重要事項を書く。
Day 23
仕事の優先順位を整理する。
Day 24
不要な会議を確認する。
Day 25
上司または同僚と業務量について話す。
Day 26
今後3か月の目標を3つ決める。
Day 27
家族との時間を計画する。
Day 28
休暇または休息日を計画する。
Day 29
「これからやめること」を5つ書く。
Day 30
「これから大切にすること」を5つ書く。
終章
あなたは、壊れるまで頑張らなくていい
あなたが長い間、強くあり続けてきたなら、
もう少しだけ、自分自身に優しくしてもよい。
あなたが家族のために頑張ってきたなら、
あなた自身も家族の一員である。
あなたが会社のために尽くしてきたなら、
あなたの健康も守られるべき大切な資産である。
あなたが学生のために頑張ってきたなら、
あなた自身も学び、休み、成長する権利がある。
あなたが患者のために働いてきたなら、
あなた自身の健康も大切である。
あなたが顧客のために働いてきたなら、
あなた自身の人生も大切である。
そして、あなたが長い間、
「私は大丈夫」
と言い続けてきたなら、
今日だけは、
「私は少し疲れている」
と言ってもよい。
それは敗北ではない。
それは人間として自分自身を認めることである。
最後に
強い人とは、
決して倒れない人ではない。
強い人とは、
倒れたときに助けを求めることができる人である。
強い人とは、
自分の限界を知っている人である。
強い人とは、
他人を守るだけでなく、自分自身も守る人である。
強い人とは、
仕事だけでなく人生全体を見ることのできる人である。
強い人とは、
「頑張ること」と「休むこと」の両方に価値があると理解している人である。
だから、
あなたはいつも強くなくてもいい。
いつも笑っていなくてもいい。
いつも成功していなくてもいい。
いつも他人を支えなくてもいい。
時には誰かに支えてもらっていい。
時には立ち止まっていい。
時には泣いてもいい。
時には「助けてください」と言っていい。
そして、もう一度歩き出すとき、
以前より弱くなったのではない。
むしろ、
自分の人生を大切にするための、本当の強さを学んだのである。
参考文献
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著者について
Prof. Dr. Larry Adams
Prof. Dr. Larry Adams is an academic, professor, doctoral studies educator, researcher, academic supervisor, and higher-education leader whose professional interests include doctoral education, organizational studies, leadership, management, research methodology, education, workplace development, and the relationship between human well-being and organizational performance.
His academic and professional work reflects a continuing interest in how institutions can develop people while maintaining high standards of performance, accountability, scholarship, and ethical leadership.
In this book, Prof. Dr. Larry Adams examines workplace pressure not merely as an employment issue, but as a human issue. The central message is that sustainable achievement requires a balance between responsibility and recovery, performance and well-being, leadership and compassion, and professional commitment and personal dignity.
著者からのメッセージ
仕事は人生の重要な部分である。
しかし、仕事が人生のすべてになってはいけない。
人間には、働く権利だけではなく、休む権利もある。
責任を果たすことだけではなく、自分自身を守る責任もある。
社会に貢献することだけではなく、自分自身の人生を生きることも大切である。
もしあなたが今、
「強くあり続けることに疲れた」
と感じているなら、
この本の最後の言葉を覚えておいてほしい。
あなたは、壊れるまで頑張らなくていい。
あなたの健康は大切である。
あなたの家族は大切である。
あなたの人生は大切である。
そして何より、
あなた自身が大切である。
— Prof. Dr. Larry Adams